膀胱留置カテーテルとは、持続的に尿を排出させるために尿道から膀胱に挿入するチューブのことです。
排尿障害や水分出納管理が必要な場合に適応となります。
膀胱留置カテーテルは感染のリスクが高くなるのはなぜだろう?
カテーテルを介して菌が膀胱内に侵入しやすいため、感染のリスクが高くなります。
膀胱留置カテーテルを留置している場合は、感染リスクが高まるため、感染の兆候の早期発見や清潔ケアなどが必要になります。今回は、膀胱留置カテーテルの感染リスクや目的、観察項目などを解説していきます。
膀胱留置カテーテルとは?
膀胱留置カテーテルとは、持続的に尿を排出させるために尿道から膀胱に挿入するチューブのことです。バルンカテーテルとも呼ばれます。
尿量管理が必要な術中・術後に挿入されることが多いので、急性期の実習では関わる場面も多いでしょう。
膀胱留置カテーテルの目的
- 膀胱留置カテーテルを挿入する目的は下記の通りです。
- 尿閉などの排尿障害による排尿処理のため
- 術中・術後の尿量管理のため
手術中は水分出納管理が重要になるため、尿量計測のために膀胱留置カテーテルを挿入します。
膀胱留置カテーテルの適応
膀胱留置カテーテルの適応は、下記の通りです。
- 膀胱内に尿が充満しているが自然排尿できない排尿困難な場合
- 自然排尿ができない尿閉状態の場合
- 尿量を正確に測定する必要性がある場合
- 泌尿器手術の安静および止血の必要がある場合
- 安静臥床が必要で排尿管理を行う場合
膀胱留置カテーテルにも種類があり、泌尿器手術の場合は止血目的で留置されるケースもあります。
術後に膀胱留置カテーテルを挿入するのはなぜ?
全身麻酔以外の手術後に膀胱留置カテーテルを入れる場合もあるけど、なぜだろう?
全身麻酔とは異なる下半身麻酔と呼ばれる麻酔の場合は、尿量管理以外に一時的な排尿障害を予防するために挿入します。麻酔の影響により膀胱や直腸の機能が一時的に障害されることもあるので、尿閉を防ぐためにカテーテルを留置します。
膀胱留置カテーテルの種類
膀胱留置カテーテルには、大きく分けて2種類あります。
- 2WAYバルーンカテーテル(導尿目的)
- 3WAY止血用バルーンカテーテル(止血目的)
一般的なバルーンカテーテルは、排尿用のルートと固定用のルートの2WAYの仕様になっています。止血用のバルーンカテーテルは、一般的なカテーテルに+膀胱内に注入できるルートが付いています。
止血用の3WAYの膀胱留置カテーテルは、泌尿器の手術後や血尿が強い場合に使用されます。持続的な膀胱洗浄が必要な場合や膀胱内の凝塊血の除去などに用いられることが多いです。
膀胱留置カテーテルの合併症
膀胱留置カテーテルは感染のリスクが高いって聞くけど、他にどんな合併症があるんだろう?
膀胱留置カテーテルの合併症は下記の通りです。
- 尿路感染症
- 尿道損傷
- 膀胱刺激症状
- 尿漏れ
- 固定部位の皮膚傷害
長期間留置が必要な場合は、固定箇所の皮膚トラブルも起こりやすいため注意が必要です。
尿路感染症のリスクが高まる理由
膀胱留置カテーテルを挿入することで、尿路感染症のリスクが高くなるのはなぜ?
尿路感染症を引き起こす原因として、膀胱留置カテーテルの外側と内側の2つが挙げられます。
カテーテルの外側が原因の場合
- カテーテル挿入時に尿道から膀胱内に細菌が押し込まれる
- 会陰部や直腸に付着している微生物がカテーテルと尿道の間を通って膀胱内に侵入する
- カテーテル挿入部の汚染により細菌
カテーテルの内側が原因の場合
- カテーテルと採尿バッグの接続部から細菌が侵入する
- 採尿バッグの排液口から微生物が侵入、バッグ内が汚染されカテーテル内に侵入する
カテーテル挿入時は清潔操作で実施しますが、留置期間が長くなると感染のリスクも高くなります。
膀胱留置カテーテルの観察項目
膀胱留置カテーテルを留置している患者さんを担当するときは、以下の観察項目をチェックしましょう。
尿量
バルーンバックに溜まった尿量をチェックします。成人の尿量の正常値は、1,000〜1,500ml/日であり、高齢者になると成人よりも減り、1日1,200ml程度になります。
- 尿量が少ない場合→脱水傾向が考えられ、膀胱内の感染リスクが高まります。
- 尿量が増えない、尿が出ない→カテーテルが閉塞している可能性があります。
尿の性状
尿の性状は、尿路感染や出血の有無を判断する指標になるため、必ずチェックしましょう。正常な尿は淡黄色〜淡黄褐色です。
- 尿中に浮遊物がある場合→膀胱炎などの尿路感染症など
- 尿の色が透明な場合→水分過多、尿崩症、糖尿病など
- 尿の色が褐色の場合→脱水症状、ヘモグロビン尿など
- 尿の色が赤色の場合→血尿、尿路結石症など
感染を起こしている場合は、尿が白っぽく濁り、膿尿が出る場合もあります。また、血の塊が浮いている場合は、尿道が傷ついていることも考えられます。
皮膚の状態
カテーテルを同じ位置で固定を続けると会陰部や鼠蹊部、太ももなどに皮膚障害を起こす危険性があります。固定部分とカテーテルが触れている部分の発赤、痒みの有無などを観察しましょう。
尿漏れの有無
膀胱留置カテーテルを挿入していても尿漏れする場合があります。尿漏れの原因として、細菌感染などが原因となり膀胱が刺激され収縮したり、固定水が抜けてバルーンが縮小したりすることが挙げられます。
カテーテルが閉塞して膀胱内の尿が溜まりすぎた時にも尿漏れが起こることもあります。
尿の流出の有無
カテーテルが屈曲、閉塞している場合は、尿の流出が見られない場合があります。尿がカテーテル内を流出しているかをチェックしましょう。
カテーテルがベッド柵や寝具に挟まって流出しない場合も多いので、カテーテルの屈曲がないかを確認しましょう。
データの観察
膀胱留置カテーテルは感染のリスクが高いため、血液検査やバイタルサインなどのデータも併せて確認しましょう。
- 感染の兆候のデータ
- 体温
- WBC(白血球)
- CRP(炎症反応)
- Cr(腎機能)
尿路感染を起こすとどうなる?
膀胱留置カテーテルは尿路感染のリスクが高いことは分かったけど、尿路感染を起こすとどうなるんだろう?
尿路感染症になると38度以上の高熱や尿の混濁などの症状が見られます。膀胱から腎臓に細菌が移動すると腎盂腎炎と呼ばれる病気になります。
膀胱炎が悪化すると腎盂腎炎を引き起こし、発熱や吐き気などの症状が見られます。腎盂腎炎になると全身の感染症となるため、早期発見と治療が必要です。腎盂腎炎が悪化すると腎臓に膿ができることもあるため、治療期間が長引くでしょう。
まとめ
今回は、膀胱留置カテーテルの感染リスクや目的、観察項目などを解説しました。膀胱留置カテーテルは実習でも見る機会が多いので、必ず押さえておきましょう。
尿路感染のリスクが高まるので、感染兆候の視点を持って観察を行うことが大切です。
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