【図解あり】陰部洗浄の観察項目や手順のポイントを解説!

陰部洗浄とは、おむつを装着している患者さんや安静臥床が必要な患者さんに対して陰部の清潔を保つために行うケアです。頻度としては、おむつ交換のタイミングで毎日実施します。

陰部洗浄はなぜ毎日実施する必要があるの?

元看護師★TOMO★

陰部は排泄物や分泌物によって汚染される部位なので、尿路感染や褥瘡などのトラブルの原因になりやすいんです。感染や皮膚トラブルを防ぐためにも毎日実施します。

陰部洗浄は看護学生の実習でも実施する機会の多いケアでもあるため、男女別のケアの方法や根拠、手順を押さえておきましょう。今回は、陰部洗浄の観察項目や手順、実際に私が実践していたコツを含めて解説していきます

目次

陰部洗浄が必要なケース

陰部洗浄ってどんな患者さんの場合に適応になるんだろう?

元看護師★TOMO★

安静臥床の指示やおむつを装着している患者さんが適応になります。

陰部洗浄が必要な患者さんに多いケースは下記の通りです。

  • 安静臥床が必要
  • 全身状態が低下している
  • 入浴・シャワー浴ができない
  • おむつを使用している
  • 膀胱留置カテーテルを挿入している

陰部洗浄の目的

陰部洗浄の目的は下記の通りです。

  • 排泄物や分泌物を拭き取り、陰部を清潔にする
  • 陰部の観察を行う
  • 陰部周辺を含む皮膚障害や尿路感染、膣感染を防ぎ、早期発見に努める
  • 痒み、臭い、不快感をなくし、爽快感を得られる

特に、膀胱留置カテーテルを挿入している患者さんは尿路感染のリスクも高いため、感染を防ぐためにも陰部洗浄が大切になります。

陰部洗浄のアセスメント

元看護師★TOMO★

まずは、陰部洗浄において最適な方法で実施するためにアセスメントを実施しましょう。

①バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、呼吸、意識レベル)

バイタルサインに異常がないかを確認します。

②感染症の有無、創傷や手術などの治療経過、安静度

安静度によって体位を変更する必要があるため、現在の安静指示などを確認します。

③呼吸・循環状態、麻痺、筋力低下、関節可動域制限などの運動機能障害

麻痺や関節可動域制限がある場合は、開脚時に介助する必要があります。

④自立や介助の必要せなどセルフケア能力

自立している場合は、ポータブルトイレやトイレで実施します。介助が必要な場合は、便器やおむつなどを使用します。

⑤皮膚・粘膜の状態

すでに皮膚や粘膜に症状がある場合は、悪化していないか確認するため、経過を把握しておきましょう。

⑥排泄機能、排泄パターン、排泄物・分泌物、排泄方法

排泄物の量や性状、便の状況、尿計測の有無などを把握しておきましょう。

⑦自覚症状や認知状態

痒みや疼痛、不快感の訴えや認知状態について確認しましょう。

⑧安静保護が必要な部位の有無

カテーテル類や疼痛、損傷の部位を把握しておきましょう。

元看護師★TOMO★

陰部洗浄は毎日実施するケアですが、実施のタイミングや実施時間を予測するために、前回の実施記録を見ておきましょう!

陰部洗浄の観察項目

陰部洗浄の実施中には、下記の項目を観察します。

皮膚や粘膜の状態

発赤や腫脹、表皮剥離などの症状がある場合は、トラブルを起こしている可能性があります。膀胱留置カテーテルを固定している場合は、固定部位の皮膚状態もチェックします。

排泄物・分泌物の量や排泄物の皮膚への付着

排泄物がいつもよりも少ない、便秘傾向などの場合は排便コントロールが必要になります。また、便が臀部に付着している場合は、褥瘡などの皮膚トラブルのリスクが高まることが考えられます。

排泄方法、排泄用具によるトラブルの有無

おむつを装着している場合は、おむつパッドによるかぶれなどの皮膚トラブルのリスクが高まるため注意が必要です。

痒みや痛みなどの自覚症状の有無

痒みや痛みなどの症状がある場合は、尿路感染症や膣感染などが考えられるため確認しましょう。

陰部洗浄の必要物品

陰部洗浄に必要な物品は下記の通りです。

  • シャワーボトル(湯温38〜39度)
  • 泡状の石鹸
  • ディスポーザブルガーゼ
  • 便器またはおむつ
  • ディスポーザブルの防水シーツ
  • ビニール袋
  • ディスポーザブル手袋2〜3組
  • エプロン1組
  • 下着
  • バスタオル
  • フェイスタオル
元看護師★TOMO★

泡状の石鹸がない場合は、液体石鹸とガーゼ、少量のお湯をビニール袋に入れて揉み込むと泡立ちますよ!

陰部洗浄の手順と流れ

ここからは、陰部洗浄の手順と流れについて根拠と併せて解説していきます。男性と女性で洗い方や手順が異なるため、ポイントを押さえておきましょう!

必要物品の準備

必要物品を準備して部屋の環境を整える

事前に陰部洗浄の必要性を説明し承諾を得ておきましょう。陰部を清潔にするためにも、事前に便意や尿意がある場合は、排泄を済ませてもらいます。患者さんに合わせた最適な必要物品を準備して部屋の環境を整えます。

部屋の温度は22〜24度、多病床の場合はカーテンを閉めてプライバシー保護に努めます

仰臥位になってもらい、ベッドの高さを調整します。

ベッドの高さを調整することで、陰部洗浄をしやすく作業効率が良いため

陰部洗浄の実施

①エプロン、手袋を装着する

感染予防のため、エプロン、手袋を装着して準備を行います。

手袋は2重にして装着しておくと、手袋を変える時の手間が省けます。

②脱衣して体位を整え臀部にバスタオルを敷く

腰上げができる場合は、できるだけ自力で腰上げを促します。羞恥心に配慮しながら、脱衣しましょう。

③防水シーツを臀部の下に敷き、便器またはおむつを敷く

寝衣とシーツ類を濡らさないために、防水シーツを臀部にしっかり敷いておきましょう。便器を差し込む場合は、臀部と便器がしっかり密着しているか確認しましょう。

④下肢、両鼠蹊部、恥骨丘にバスタオルをかける

下肢にバスタオルをかけ、両鼠蹊部、恥骨丘に沿ってタオルをかけます。

不必要な露出を避け、両鼠蹊部、恥骨部、シーツ類を濡らさないため

⑤看護師の前腕で湯温を確認し、問題がなければ患者さんに声をかけ大腿部で湯温を確認する

粘膜部に湯をかける前に、温度感覚に敏感な大腿部の皮膚で湯温を確認します。

火傷や不快感を防ぐためにも必ず実施前に自身で湯温を確認しましょう。

⑥シャワーボトルで陰部全体に上から下に湯をかける

皮膚と排泄物、付着物を十分に濡らすことで石鹸の泡が伸びやすく、汚れが落ちやすくなります。

シャワーボトルを押すと勢いよく水が飛び出すこともあるので、ゆっくり傾けながらお湯を流すようにしましょう。

<女性の場合>

陰部洗浄 女性

①片手の親指と人差し指で大陰唇を開き、もう片方の手で石鹸をつけたガーゼで洗う

羞恥心や緊張に配慮しながら、泡のついたガーゼで尿道口、膣口、小陰唇を上から下に洗います。

逆行性感染を予防するために、尿道口、膣口、小陰唇を上から下に洗います

②大陰唇、鼠径、会陰、大腿内側、肛門と周囲を洗う

ガーゼの新しい面を使って、大陰唇、鼠径、会陰、大腿内側、肛門と周囲を洗います。

便の付着を避けるために肛門は最後に洗います

③泡がついた手袋を交換し、片手で大陰唇を開き、手袋を交換した方の手でシャワーボトルを持ち、洗い流す

泡がついた使用済みの手袋を外し、ビニール袋に入れます。

排泄物や石鹸によるシャワーボトルへの汚染を避けるため

片手で大陰唇を開き、洗った順番にお湯をかけて石鹸を十分に流します。

石鹸成分が残っていると皮膚トラブルや感染の原因になるため、十分に流しましょう。

<男性の場合>

陰部洗浄 男性

①片手で陰茎を持ち、包皮を下げる

陰茎はやや強めに持つと洗いやすくなります。亀頭と包皮の間に垢が溜まりやすいため、包皮を下げて洗います。

②泡のついたガーゼで尿道口、亀頭、包皮、陰茎の順に洗う

逆行性感染を防ぐため、尿道口、亀頭、包皮、陰茎の順番に洗います。

包皮を下げた場合は、包皮を元に戻すことを忘れずに!

包皮を戻さないと亀頭が締め付けられる嵌頓(かんとん)の状態になり、壊死を起こす危険性があるため、必ず戻しましょう。

③片手で陰茎の位置を変えながら、陰嚢、鼠径、会陰、大腿内側、肛門と周囲を洗う

特に陰嚢の裏側は汚れが溜まりやすいため、しっかり洗いましょう。肛門は便の付着を防ぐために最後に洗います。

④泡がついた手袋を交換し、片手で陰茎や陰嚢を持ち、手袋を交換した方の手でシャワーボトルを持ち、洗い流す

泡がついた使用済みの手袋を外し、ビニール袋に入れます。

排泄物や石鹸によるシャワーボトルへの汚染を避けるため

陰茎や陰嚢の裏に湯をかけ、石鹸をしっかり流します。

石鹸成分が残っていると皮膚トラブルや感染の原因になるため、十分に流しましょう。

①陰部と臀部のお湯を拭き取る

可能な場合、腰上げを促しながら臀部と肛門周囲の水気を拭き取ります。

水分が残った状態は細菌が繁殖しやすく、陰部の不快感にもつながります。

臀部の洗浄

肛門や臀部の汚染が強い場合、臀部洗浄を実施します。

①側臥位に体位を変換する

太ももや背中など不必要な露出を避けるため、バスタオルで保護します。

②上から下に向かって臀部にお湯をかけ、石鹸をつけたガーゼで上臀部→下臀部→臀裂の順に洗う

汚染が弱い→強い順番で洗うことで感染を予防します

③手袋を交換し、シャワーボトルのお湯をかけ石鹸を流す

泡がついた使用済みの手袋を外し、ビニール袋に入れます。

排泄物や石鹸によるシャワーボトルへの汚染を避けるため

④ ディスポーザブルガーゼなどで肛門、臀部を拭き、使用済みのおむつをまとめる

使用済みのおむつは汚れた面を内側にして丸めておきます。肛門、臀部の水分はしっかり拭き取りましょう。

水分が残った状態は細菌が繁殖しやすく、陰部の不快感にもつながります。

⑤ 着衣して寝衣を整える

おむつ交換が必要な場合は、おむつ交換を実施します。寝衣を整え、ベッドと体位や周辺環境を整えて終了です。

陰部洗浄のポイント

陰部洗浄のポイントは下記の3つ!

  1. 羞恥心に配慮し、不必要な露出を避ける
  2. 感染予防に注意しながら実施する
  3. 陰部、排泄物の観察をしっかり行う
元看護師★TOMO★

陰部洗浄は患者さんにとっても羞恥心が強いケアなので、不要な露出は避け、素早く終わらせることが大切です。

まとめ

今回は、陰部洗浄の観察項目や手順、実際に私が実践していたコツを含めて解説しました。陰部洗浄は院部の不快感を軽減するだけでなく、尿路感染を防止するためにも必要なケアです。患者さんにとっても羞恥心の強いケアになるため、必要性の説明や安心してケアを受けていただけるような環境づくりも大切になります。

元看護師★TOMO★

看護学生の実習でも実施する機会が多いケアの一つなので、基本的な手順はしっかりマスターしておきましょう!

参考元:基礎・臨床看護技術 第3版/医学書院

根拠が分かる!看護学生におすすめの看護技術の参考書

看護技術の手順には根拠があり、根拠に基づいて実施することが求められます。清潔ケアなどの基礎看護技術は看護師になってからも必要なスキルなので、学生のうちから身につけておきましょう。

元看護師★TOMO★

このテキストなら手順から根拠まで写真付きで載っているので、看護師になってからも活用できますよ!

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この記事を書いた人

元看護師・(株)カラーリスタ取締役
看護学校卒業後はオペ室→一般病棟で勤務。
退職後はフリーランスを経て起業。
現在は、webコンテンツを通して看護学生の支援を行っている。

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